今回は支援において、その土台となる信頼関係をどのように築くかということについてお話しします。
おそらく、支援におけるいろはのいとして研修などで教わることの多い信頼関係ですが、子ども家庭支援の場においては、その他の領域における信頼関係の在り方に比べると少し複雑です。
そんな子ども家庭支援における信頼関係について整理しながら、どのように築いていけばいいのか早速考えて見ましょう。
支援者の皆さんは、ご自身が実際に関わっている家族や子どものことを思い浮かべながら振り返ってみてください。
信頼関係=ラポールの形成
まずは支援における信頼関係とはどんなものなのかについて振返ります。
信頼関係、心理学の分野ではラポールと言われます。ラポールとはフランス語で「架け橋」という意味です。つまり、信頼関係を築くとは、ラポールを形成するということであり、相手と自分との間に心の架け橋を築き、互いに信頼し合い、安心感を持てる関係を構築することを言います。
ラポールの形成は、習熟すればだれでもできるという、単なる技術的なものではありません。相手を尊重し、理解しようとする支援者としての姿勢であり、人と人がかかわりあう上で欠かしてはならない態度と言えるでしょう。
ラポール形成 3つの原則
ラポールの形成には3つの原則があると言われています。これらを大事にすることで、相手に安心感や親近感を生み出すことができます。
- 肯定と尊重:相手の価値観や感情を肯定し、尊重する姿勢を持つこと
- 行動の類似性と同調:相手の行動やスタンスに合わせること
- ペーシングとリーディング:
- ペーシング:相手の話し方や呼吸、視線などに合わせる
- リーディング:徐々に自分のペースに引き込む
- の肯定と尊重については、先ほども申し上げたように、人と人がかかわりあう上で欠かしてはならない姿勢です。
- の行動の類似性と同調とは、例えば共通の趣味や話題を見つけて会話するといったことが挙げられます。
- ペーシングとリーディングは、少しイメージがつきづらいかもしれませんが、話の内容だけではなく空気感も合わせて
テクニックと言えば、傾聴・受容・共感が大切ですが、これについては、また別の機会に詳しくお話ししたいと思います。
子どもや家庭の支援におけるラポール形成の特徴
子どもや家庭の支援におけるラポールの形成は、カウンセリングや病院などの支援とは少し異なる特徴があります。
- 多層的な関係性の構築
- 子どもや家庭の支援では、支援対象が子どもだけでなく、その家族全体に及ぶため、複数の関係性を同時に構築する必要があります。
- 発達段階に応じたアプローチ
- 子どもは成長とともに発達段階が変わるため、ラポール形成の方法もそれに応じて変化させる必要があります。
- 保護者との協力関係
- 子どもや家庭の支援では、子どもだけでなく保護者との信頼関係も非常に重要です。保護者が支援者を信頼し、協力的であることが、子どもへの支援の効果を高めるための鍵となります。
- 長期的な関わり
- 子どもや家庭の支援は長期的な関わりが求められることが多いです。子どもの成長や家庭の状況に応じて、継続的に支援を提供する必要があるため、長期的な信頼関係を築くことが重要です。
子どもや家庭の支援におけるラポール形成の難しさ
- 多様なニーズと背景
- 子どもや家庭の支援の対象は、子どもとその家族全体であり、それぞれが異なるニーズや背景を持っています。例えば、経済的困難、健康問題、教育の遅れなど、さまざまな課題が複雑に絡み合っていることが多いです。このため、支援者は多様な問題に対応しながら、個々のニーズに合わせたアプローチを取る必要があります。
- 信頼関係の構築に時間がかかる
- 特に初対面の段階では、家庭が支援者に対して警戒心を持つことが多く、信頼関係の構築には時間がかかります。家庭が過去に支援を受けた経験がある場合、その経験がネガティブであれば、さらに信頼を得るのが難しくなります。
- 子どもの発達段階に応じた対応
- 子どもは成長とともに発達段階が変わるため、支援者はその都度アプローチを変える必要があります。幼児期には遊びを通じた関わりが効果的ですが、思春期にはより対等な関係を意識したアプローチが求められます。このように、発達段階に応じた柔軟な対応が求められることが難しさの一因です。
- 保護者との関係性
- 保護者が支援者に対して協力的でない場合、ラポール形成は特に難しくなります。保護者が支援を必要としていることを認識していない、または支援を拒否する場合、信頼関係を築くのは困難です。また、保護者自身がストレスや問題を抱えている場合、その影響が子どもにも及び、支援が複雑化します。
- 感情的な負担
- こども家庭支援では、感情的なサポートが重要な役割を果たしますが、これが支援者にとって大きな負担となることがあります。特に、虐待や家庭内暴力などの深刻な問題に直面する場合、支援者自身が感情的に巻き込まれやすく、適切な距離を保つことが難しくなります。
- 長期的な関わりの必要性
- こども家庭支援は長期的な関わりが求められることが多く、支援者は継続的に家庭と関わり続ける必要があります。これにより、支援者の負担が増し、バーンアウトのリスクも高まります。また、長期的な関わりの中で家庭の状況が変化することも多く、その都度対応を見直す必要があります
まとめ
子どもや家庭の支援では、支援者と家庭との間に強固な信頼関係を築くことが、効果的な支援の鍵となります。信頼関係が築かれることで、家庭は支援者に対して安心感を持ち、問題や悩みを率直に話すことができるようになります。これにより、支援者は家庭のニーズを正確に把握し、適切な支援を提供することが可能となります。
信頼関係を築くということは、単なる技術ではなく、相手を尊重し、理解しようとする姿勢が求められます。上記のように様々な複雑さ、困難さがある子どもや家庭の支援ですが、この姿勢が特に重要です。どんなに困難でも、どんなに長い時間がかかっても、支援者がこの姿勢でい続けることこそが支援の質に大きく影響します。
対人支援の基本を忘れず、子どもや家族の支援に取り組みましょう。
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